~遺言~
近年『終活』という、言葉や活動が、広く周知され、一部の人による特別な事、というイメージが薄れ、極一般的な事と、広く認知されてきており、テレビ、雑誌、インターネット等でも、特集が組まれる事が、多くなってまいりました。
そういう社会環境も手伝って、「遺言」「遺言書」「エンディングノート」等に対する注目も、益々大きくなってきております。
1.「遺言」と「遺書」の違い
辞書で、「遺言」と引いてみますと、(「大辞泉」より)
①「死に際に言葉を残すこと。先人が生前に言ったこと。」
②「人が死亡後に法律上の効力を生じさせる目的で、遺贈、相続分の指定、相続人の廃除、認知などに着き、民法上、一定の方式を従ってする単独の意思表示」と、2つの意味が、記載されています。
①の説明のように、「死に際の言葉」を、書面に書きとどめたものが、いわゆる「遺書」です。
②の説明のように、死後の財産関係や、身分関係に関する処分を行う、法的な文書となるのが、「遺言」です。ちなみに、この「遺言」という言葉。
一般的には、「ゆいごん」と読まれる事が、多いと思われますが、法律用語として、②の意味で、使用する際には、「いごん」と読まれる事が多いです。
2.遺言を書くタイミング
先述した通り、「遺言」とう言葉には、2つの意味が有る為、両者は混同されがちな事も有り、一般の人は、困惑してしまう事も有るでしょう。
『終活』という、言葉や活動が、広く周知されてきている、近年においては、自分達が元気な内に、「遺言」を書いておいた方が良い、との認識も、広まってきていますが、以前は「遺書」というものは、死ぬ直前に書くものである、という考え方をする人も、多かったのではないでしょうか。
しかしそれは、「遺言」は、死に際に自分の気持ちを書くものである、という①の意味、いわゆる「遺書」と混同される事が多かったのも、一つの要因だったのではないか?と思われます。
「遺言」は、自分の死後の財産や、身分関係について、予め意思表示をしておく行為です。「生者必滅」生あるものは、必ず滅する時が来る。
「会者定離」出会ったものは、必ず別れの時が来る。
「諸行無常」森羅万象、この世に存在している、万物万象は、常に変化し、移り変わっており、この世に、永遠に変わらないものは、一つも無い。
という言葉も有る様に、人は誰でも、生まれたからには、遅かれ早かれ、いつか必ず死を迎えます。
この現実から、目を背けたい方も、多いかもしれませんが、これは紛れも無い事実であり、宇宙普遍の真理であります。よって、例外は無いのです。
「遺言」は、自分がいつか死んだ時に備えて、自分が元気な内に、書いておくものなのです。「遺言」は、自分の財産の処分等に関する、意思表示なので、判断能力が有る内にしか、書くことが認められていません。
ですので、死ぬ直前まで、「遺言」は書くものではないと、思っていたら、その後判断能力が低下して、遺言を書くことが叶わなかった、という人が、少なからずいるのも、これもまた事実です。
勿論、価値観や考え方等は、人それぞれですが、ご自分の為にも、残される大切な人の為にも、ご自分の判断能力が有る、元気な内に、「遺言」を書く事を、検討されてはいかがでしょうか?
3.遺言に記載する内容
遺言事項
①財産関係:誰に財産を相続させるのか?どの様な遺産分割にするのか?等
②身分関係:婚外子を認知するのか?未成年の子の後見人を、誰にするのか?等
「遺言」は、民法に従って作成する、法的な文書ですので、民法に規定された、財産関係や身分関係にのみ、効力が有ります。自分の財産を、相続人以外の誰に相続させるのか?(寄贈、寄付)
相続人の内、誰にどの財産を、相続させるのか?(遺産分割の指定)誰に遺言を執行させるか(遺言執行者の指定)。
婚外子(婚姻外の子)の認知をする。残された未成年の子の後見人を指定する。墓守する者を指名する(祭祀継承者の指名) 等。
「家族皆で助け合って、仲良く暮らしていきない」とか、「自分が死んだら、葬式は、こういう風にやってくれ」等という事は、それだけ書いておいても、法的な拘束力は有りません。(効力を持たせるような、書き方にする事は可能)ですので、その様な事を、いくら書いておいても、効力は有りません。
4.付言事項
遺言に記載しても、法的拘束力が、無いからといって、それ以外の事を書いてはいけない、という訳ではありません。遺言には、「付言事項」というものが有り、家族に対するメッセージを、自由に残す事が可能です。
法的拘束力が無い事項であっても、家族に対するメッセージとして、記載しておけば、場合によっては家族が、従ってくれる可能性も有りますし、そのメッセージを読んだ家族が、遺言者の心情を理解して、揉めようとする気持ちが、生じなくなるかもしれません。
最近の、遺言作成相談では、付言項目の活用も、重要視される傾向にあります。
例えば、「面倒を良くみてくれた長男に、より多くの遺産を贈与する」というような、遺言を書く場合、「付言事項」として、何故その様な、遺産分割方法にすることにしたのか?という事について、自分の思いを記載しておけば、将来の紛争を、防ぐことになるかもしれません。