一般的に「墓じまい」とは、既存の(今有る)お墓(墓石等)を、解体、撤去、処分し、墓地を更地に戻して(墓地の原状回復)、墓地の管理者へ墓地区画を返還するという、一連の行為のことを指します。墓じまいを行うことで、お墓に納骨(埋蔵、埋葬)されていた遺骨を、他の納骨施設(墓地、お墓、納骨堂、樹木葬、永代供養墓、合祀墓等)へ移し、改めて納骨(埋蔵、埋葬、収蔵)し直すことを「改葬」と言い、改葬する為には、行政上の手続きが必要となっており、改葬元(現在遺骨が納骨されている墓地)の墓地が所在する管轄役所(区役所、市役所、町村役場等)より、「改葬許可」を取得してからでないと、改葬を行うことができません。

その性質上、「墓じまい」と「改葬」は、切っても切れない関係であり、「墓じまい」を行うと、納骨されていた遺骨を、他の納骨施設等へ、改めて納骨し直す必要が出てくる為、基本的には2つの行為は、セットで考える必要が有ります。少子高齢化や核家族化が、急速に進む中、近年「終活」を積極的に行う方が増えていることもあり、皆様もどこかで「墓じまい」という言葉を、一度位は見聞きしたことが有るのではないでしょうか?

「墓じまい」「お墓じまい」という言葉の語源や始まりは、諸説有りますが、「墓じまい」という言葉自体が、古くから使われてきた言葉というわけでは無く、広く一般的に使われるようになったのは、近年になってからのことです。「墓じまい」という言葉が、広く認知されるようになってきた背景には、少子高齢化や核家族化等、近年の日本における、社会構造の変化や、それに伴う人々の価値観やライフスタイルの変化が有り、お墓の継承者問題が、以前より起きやすく、又、深刻化しやすい状況となってきております。

その様な状況の中、テレビ、ラジオ、新聞、書籍、雑誌、インターネット等の、各メディアでも注目され、近年度々取り上げられるようになり、人々の耳目に触れるようになってきたことも、「墓じまい」という言葉(メディアにより作られた「造語」だと言われています)や行為が、広く世間、人々に認知されるようになった、一つのきっかけであると言われております。主にその家の長男が、代々継承し、先祖代々のお墓を守っていくという、従来型のお墓を、今までのように守っていくことが、困難となってきている昨今、お墓の継承問題を解決する為の、一つの選択肢として、いわゆる「墓じまい」を行う人は、更に増加していくものと予測されております。

実際に、2019年の改葬件数は、全国で年間12万件超となっており、東京や北海道では、ぞれぞれ単体で、年間1万件超となっており、概ね年々増加傾向に有ります。冒頭でも触れましたが、墓石を建立し、主にその家の長男が、代々継承していくという、従来型のお墓は、親から子へ、子から孫へ、孫から曽孫へ、曽孫から玄孫へ・・・と、後世に亘り、主に男系の子孫が永続し、お墓を継承してくれて、ずっと子孫が墓守りをしてくれる、という事が前提となっています。
しかしながら、世界に類を見ないスピードで、急速に少子高齢化が進んでいる、近年の日本においては、結婚しない独身者、結婚できない独身者、晩婚で子供がいない夫婦、結婚はしても子供がいない夫婦、子供はいても娘しかいない夫婦が、増加傾向に有ります。

少子高齢化と共に、核家族化も進んでおり、従来のように、親子(特に男系の第一子と実親)がずっと同居を続け、実家の家屋や土地等を相続していくという、従来型のライフスタイルを取らずに、結婚等を機に実家から出て、息子夫婦、娘夫婦達が、新たに別の所帯を持ち、独立して生計を営むという、近年の日本において増加傾向にある、新たなライフスタイルを選ぶ人が増えてきております。子供(ここでは特に男系の子)がいたとしても、進学、就職、転勤等を機に、実家やお墓から、遠方に居住する場合も多く、必ずしもお墓を継承してくれるとは限りません。

更に近年では、人々の価値観が、変化、多様化してきており、お墓の継承だけに限ってみても、お墓を継承する側では、「お墓は(主に)長男が継承し、代々守っていくもの」という従来型の考え方が、希薄化してきている傾向にあります。お墓を継承させる側では、「お墓の維持管理、墓参、経済的な負担等、子供や孫達に迷惑や負担をかけたくない」といった考えをする人が、以前と比べてかなり増えてきております。

その様な背景もあり、「墓守りをしてくれる、お墓の継承者がいない」「お墓の維持管理が困難となってしまった」等というお墓が増えてきたこともあり、その解決法の一つの選択肢として、「墓じまい」をされる人が増えてきていると考えられます。そうした状況に対応すべく、近年では「お墓」の様式も多様化傾向に有り、お墓の継承を前提とせず、継承者が不要なタイプのお墓も、数多く分譲されるようになってきております。
 (例/永代供養付きの「樹木葬」「自然葬」「永代供養墓」「合祀墓」「合葬墓」「納骨堂」等) こうした多様な「受け皿」的なお墓が、増えてきたこともあり、墓じまいに踏み切る人も、増えてきたと考えれます。